翻訳クラス

最近、英語仲間でもあり小学生の親でもあるママ友に翻訳レッスンを始めた。もはや20年も前の自分の訳した本を題材にレッスンをしていて、いろいろと気づかされることがあった。

何より改めて思ったのは、「翻訳って面白い!」ということ。正解のない翻訳はいくらでも深めることができる……だからこそ飽きっぽいわたしでも続けてこれたのだと思う。英文和訳とはひと味もふた味も違う世界が広がっている……といっても、普通の人にはぴんとこないだろうけど。

たとえば、I have my bag.というのを「私は私の鞄を持っている。」と訳すのは英文和訳。同じ文をシチュエーションや話者によって訳し分けるのが翻訳。たとえば、エコを気にしている人が買い物した品を袋に入れようとした店員に言うなら、「自分の(鞄)があるので」と訳してもよいだろう。ただし「マイバッグ持ってます」とは訳せない。「マイバッグ」は和製英語だからだ。

……とかなんとか。ついつい考えてしまう。

今日のレッスンでは、near-genius Presidential Scholarsという言葉をどう訳すかという話題が出た。Presidential Scholarsという言葉は、Presidential Scholars Foundationに次のように定義されていた。

The United States Presidential Scholars Program was established in 1964, by Executive Order of the President, to recognize and honor some of our Nation's most distinguished graduating high school seniors.

うわあ、わたしの昔の訳はすっかり意味を取り違えていた!(言い訳だが、当時、この言葉を上記のようにちゃんと説明していたものは見あたらなかった。間違った説明をどこかで見つけ、わたしはそれを流用してしまったのだ……。)near-geniusは「天才に近い」だけど、かつてのわたしはこれを「天才と紙一重の」と訳していた……う〜ん、そりゃまずいよ。「天才と紙一重」というのは「キ」の字のけがあるというニュアンスがあるわけで、傑出した能力をもつ高校卒業生に贈られるこの称号を修飾する語としてはふさわしくない。冷や汗ものです……。

その一方で、今のわたしよりずっと潔く、パワーのある訳語や表現をみつけることもあり、「怖い者知らずだったなぁ……」とつくづく。逆に今のわたしでも全く同じように訳す部分をみつけて、自分のクセの強さに驚かされたり……。

翻訳が自己発見のネタになるとは、思ってもみなかったな。