サイトワードとは何か
これまでサイトワードの定義をきちんと説明して来なかったように思う。わたし自身、理解するまでにしばらくかかったので、ここらへんで簡単にまとめておこう。
わたしの理解では、英語学習におけるサイトワード(sight words)とは「目で見て覚える(しかない)重要語」のことである。目で見て覚えるしかないというのは、第一にその多くがフォニックスの規則に当てはまらないためであり、第二に(おそらく)一瞥して理解できる必要がある基本語だということだろう。*1
サイトワードに関心を抱いたきっかけは、アメリカの小学校生活を描いたある絵本で、アメリカの小学生はフォニックス以前にサイトワードを学ぶらしいと知ったことだ。サイトワードは品詞を問わない。*2名詞もあれば動詞も形容詞もある。共通点は、文章を読むのに欠かせない機能語だという点である。つまり、先にサイトワードを踏まえておくことは、リーディング力をつける早道であり、だからこそ、子どもを多読に導いていくことを目的とするわたしのレッスンでは、絶対に欠かせないものとして位置づけている。
サイトワードのリストは何種類もあるようだが、Trend社のPocket Flash CardsのSight Wordsシリーズ(Level A-C)はDolch Sight WordsとFry Instant Wordsの2つが一般的として、これらを元に言葉を収集している。だがサイトワードを教えるために使えそうな絵本教材を見ていくと、けっこう言葉が重複していないことが分かる。あるテキストシリーズで選ばれている50語のうち、100語をピックアップした別のテキストと共通していたのは33語にすぎなかった。50語に厳選した上記絵本教材には、全セットで324語のTrend社のサイトワード・カードのLevel 3までに出てこない単語(たとえばprettyやfunny)も含まれている。
別にprettyやfunnyといった単語が重要ではないと言いたいわけではない。それに、作成者の側にもいろいろ事情があるのだろう……。フォニックスの絵本にも共通することだが、ターゲット語を盛り込みつつ、できるだけ言葉を重複させずに何十冊もの(できる限り魅力的な)絵本を書くというのは、並大抵のことではない。こうした「学習本」が面白くないのは、ある意味で当然なのだ。何しろ制約がありすぎる。ORTのはじめてのPhonicsシリーズやScholasticのSight Word Readersは、内容的には面白いと思うし、端々でさすがに良くできていると感じることは多いが、それでも教える立場からすると必ずしも使い勝手が良いわけではない。
結局、Dr. Maggies'がマイベストになったフォニックスとは違って、サイトワードを教える上でこれがベストという教材は今のところ見つかっていない。以前から紹介しているScholasticのSight Word Readersのセット本とTeaching Guideに、同社のLearning Sight Words Is Easy!とを組み合わせていくことになりそうだ。Learning Sight Words Is Easy!は、教えるアイディアと工夫が満載でとてもいい*3。ただ、残念なことに物語が今ひとつ面白くない。絵本もコピー可能(reproducible)のミニブックしかない。CDはもちろんない。さらに、語彙が前掲のReadersよりは難しい。そこで、わたしが教えている子どもたちには(Easy!からアイディアをたっぷり借用して)Sight Word Readersを先に学ばせてから、続いてEasy!のほうに進ませようかと考えている。(もし英会話は多少習ってきたけど、読むほうは全然やっていない……という子が来たら、Easy!のほうから初めてもいいかもしれない。)
Learning Sight Words Is Easy!(Mary Rosenberg著。)
ただ、前にも書いたが、基本的にサイトワードの教材はネイティヴの子を対象に考案されているので、それ以前にどうやって音を入れ、アルファベットを入れるか(phonemics意識をつけていくか)……という問題が残されている。アメリカの小学校のカリキュラムなどを見ても、1年生の最初に音と文字の関連づけをきっちり押さえておいて、サイトワードに進むようだ。結局、四技能(リスニング・スピーキング・リーディング・ライティング)全般を平行して進めていくしかないだろう。少なくとも今の小学校英語のように「リーディングとライティングを先送り」するやり方も、多くの英語塾のように「ドリルでがんがん覚えさせる」方法も、わたしは採りたくない。ましてや「英語に慣れさせる」「英語で遊ばせる」だけではならないと自戒している。
できる限り自然習得に近い形で楽しく英語を学び、自ら英語インプットを行いたがるような英語大好きキッズを育てていきたい。究極の目的は、道具として英語を使える(英語による高等教育を受けたり、英語を使って仕事ができる)ようにすることだ。
わたしは翻訳者として20年のキャリアをもっている。英文や英語の本に長年親しんできた経験を活かして、わたしの教室では四技能のバランスの良い発達を指針としながらも、従来、あまり重視されてこなかったリスニングとリーディングの関連づけを中心に取り上げたい。そこをきちんと学ぶことで、スピーキング力も高めることが可能だからである。そのために、よみきかせ、音読(read aloud)、多読(extensive reading)、精読(intensive reading)を射程に入れていく。もちろん、それ以前にまずは英語力をつけていく必要があるのだが、それもまた英語の絵本や英語オンリーのテキストを使うことで「書き言葉」と関連づけながら教えていくことが可能であり、むしろそのほうが効果的だと考える。だから最初からアルファベットを教え、フォニックスやサイトワードを導入する。
ここに来て、ようやく自分の方針が固まった。あとは具体的に、それぞれ好きなものも違えば英語学習歴も異なる目の前の子どもたちにどう応用し、教えていくかを考えていきたい。
P.S.今日は学童の昼食後に英語絵本よみきかせ……昼前の今、まだ読む本を確定できていない……むむむ。
……さて、4時間ほど経って、今は夕方。午後に学童でのよみきかせを終えてきました。今日は聞いてくれる子どもたちについて事前に確認できなかったので、10冊ほど本を持っていき、子どもたちの要望も聞いて次の本を読みました。
David Goes to School (by David Shannon)
Hooray for Fish (by Lucy Cousins)
Who Stole the Cookies (by 中本 幹子 掛川 日出子)
前列で騒がしい1年生トリオが英語が全然分からないと言うので、日本語解説をまじえて読んだけど、そういうのってとても読みにくいし、何のために読んでいるのかが自分でも分からなくなる。基本的には「英語の本の世界も楽しいよ」という紹介でいいのだと思いながらも……。
金曜の夕方にも読んでほしいと頼まれてしまった。中途半端に近い日程なので、何をどう読もうかとまたしても迷っている。
ところでボランティアで来ていた他のお母さんの一人に、「子どもが好きなんですねぇ」と言われた。まあ、好きは好きなのだと思う。指導員さんたちは、子どもたちが騒がしくて「失礼だ」と怒っていたけど、あれくらいは騒がしいうちに入んないよ……と思うのは、わたしが小中学生の頃、毎年毎年1人ずつ、1ダースも続けて生まれたいとこの一番年長として、いつもチビたちを仕切るお姉ちゃん役をさせられていたせいだろうか。